キャスティング考。

実は今年からベイトキャスターになった私。ベイト初心者にも関わらず、アンタレスDCMD&ワールドシャウラツアーエディションという贅沢な装備を揃えてしまった。ワーシャの番手は1651Fなので、マイナー機種ではあるけれど。

ベイトは楽しい!でも難しい!

ベイトタックルの楽しさは、何と言ってもキャスティングにある。遠投が決められたり狙ったスポットにルアーをピンで落とせると、魚が釣れる釣れない以前に満足感が得られる。実際、上記の組み合わせでまだ魚は釣れていないのだが(笑)、釣場でキャスティングするだけでかなり楽しい

ただベイトリールを使ったキャストは、スビニングを使った場合とはかなり勝手が違う。かく言うワタシも、使い始めた当初は釣りをするどころか、ルアーを飛ばす事すらできず、バックラッシュの連続だった。流石のDCブレーキも、度を越したヘタクソにはカタ無しである。

その後、色々な情報を調べまくって何とかそれなりにキャストのコツは掴めてきた。まだ改善の余地は随分あるのだが、今後の成長のための礎にすべく、自分なりに理解した事をまとめてみる。

スピニングリールとの違い

キャスティングに関して、ベイトリールとスピニングリール最大の違いは、ライン送出の仕組みにある。ルアーを投げてラインが出て行く際、スピニングリールはラインローラーのみが動くのに対し、ベイトリールはラインが巻いてあるスプールが動く。

愛機のスピニングリール、サステイン。赤丸がラインローラー。
アンタレスDCMD。スプール径38mm×幅22mmもある。

写真で見て分かる通り、スピニングリールのラインローラーが極めて小さな部品(サステインでは経9mm×幅1mm程度)であるのに対して、ベイトのスプールは経30数mm前後はある。ワタシが使っているアンタレスに至っては、経38mm/ 幅22mmとシマノの現行ベイトリールの中でも最大級である。スプールに限らず、回転する物体には、動きにくく止まりにくいという性質がある。この特性を慣性モーメントと呼ぶ。ざっくり言ってしまえば、物体がデカ(重)ければ慣性モーメントも大きい。ベイト使いにとっては可笑しくなるくらいの基本事項だが、スピニングしか使った事のない人間にとっては面食らうくらいの違いがある。この慣性モーメントをコントロールする事が、ベイトのキャスティングにおいて非常に重要な要素になってくる。

慣性モーメントが大きい物体に力を加えて回転させようとすると、最初はゆっくりとしか動かないが、一旦動き出すと止まらなくなる。ベイトタックルでルアーを遠投しようとする余り、思い切り前方にブン投げようとすると、多くの場合はスプールの慣性モーメントでラインが引っ張られ、ルアーは急減速、手前の水面にボチャンと沈むのと同じ状況。同時に、スプールが回り続けることによりラインの過放出=バックラッシュが生じる。ベイトビギナーあるある。

慣性モーメントを求める公式は以下の通り。所詮文系人間の大雑把な理解だが、注目すべきは式の分子に当たる外径(D)・内径(d)・質量(M)

https://www.mikipulley.co.jp/JP/Services/Tech_data/tech24.html

外径(D)・内径(d)・質量(M)が小さいほど慣性モーメントは小さくなる。ベイトリールのスプールになぞらえれば、スプール経が小さく・溝が浅く・ウェイトが軽いほど、動きやすく止まりやすくなる。結果、軽量ルアーも飛ばしやすくなる。上記の式において、外経と内径の値は二乗で計算されるので、ルアーの飛ばしやすさに関しては特に大きな要素と言える。小型&浅溝&肉抜きスプールは立ち上がりが良いと言われる所以。最も大型スプールは重めのルアーを遠投したり巻いたりする際にその特性を発揮するので、軽い&浅いが万能ではない。しかし殊キャスティングについては小径&軽量の方が扱いやすさを実感できるとは思う。

ラインローラーのみが動くスピニングは慣性モーメントが小さい(動きやすく止まりやすい)ので、エイヤ!と力んで前方にキャストしても、そこそこルアーを飛ばすこともできる。しかしベイトタックルにおいては、力任せに前方に投げる方法では上手くいかず、力を一旦溜める、そして溜めた力をうまく放出するという感覚が必要になってくる。この力の溜め&放出に必要になってくるのは、竿を曲げる事。

キャストの基本:竿を曲げる

キャストと言えばこの人、釣り界の王様こと村田基御大。

動画の中で村田さんが連呼している通り、キャストの基本は竿を曲げる事。曲がった竿が元に戻ろうとする際の反発力を使って、ルアーを前方に送り出す事である。初心者がよくやるように、前方にルアーを投げようとする余り、「手投げ」するのは根本的に間違っている。竿が十分に柔らかければ手投げでもある程度のキャスティングは可能だが、一定の固さを備えた竿、特にワーシャのようにシャッキリした竿では、およそルアーが飛ばないか、前述の通り手前の水面に急降下する事になる。

キャストの基本については、このYouTuberの解説も分かりやすい。話の要点は村田さんのセミナーと一緒だが、キャストに向いたタックルや野球の投球との違いなど、細かいコツについて語ってくれていて参考になる。

これらの動画の要点は、正しいキャストをするためには竿を十分に曲げる事。そのためには、投げる方向とは逆に竿を振り、(竿先をしならせるために)しっかりと止める事に尽きる。これができれば、オーバーヘッドだろうがサイドハンドだろうが、はたまたフリップ、スパイラルとキャスト方法が異なっても基本は同じ。

なお手投げがダメで竿の反発なら良いという根本的な理屈は、正直な所よく分からん(笑)。ただ実際に反発力でルアーを投げてみると、ラインリリースポイントの問題かなと思えてくる。竿の反発を活かしてキャストする場合、リールを持った手に力が入るのは振り始め〜竿のしなりを得るため竿を止める部分のみ。テイクバック〜リリースまでは力を入れる必要がないので、リリースポイントのコントロールに集中しやすい。ベイトリールは慣性モーメントが比較的大きいため、スピニングより少しリリースを早く、かつソフトに行うような感覚になる。言わばスピニングのリリースは、その慣性モーメントの小ささゆえに「点」で行う瞬発的な方法でも何とかなってしまうのに対し、ベイトは「線」的、「摺り足」的なリリースになる。竿を曲げる事を重視したキャストは、力の入力&放出を竿に任せ、放出タイミングを親指でコントロールできる方法だからこそ、適時のリリースが可能になるのではないかな。

曲げやすい竿、曲げにくい竿

動作の基本は上述の通りだが、種類によっては非常に曲げやすい竿と曲げにくい竿がある。ワタシの所有しているワーシャ1651Fは番手が1なので、柔らかくはあるけれど、テーバーがF(ファースト)なので、ロッドの曲がる範囲が狭い。

テーパーの違い。https://tsurihack.com/3356より。

上図の通り、ワールドシャウラのスタンダードモデルなどに採用されているレギュラー(R)に比べて、ファーストテーパー(F)は竿先部分の曲がりが随分小さい。キャスティングの文脈においては、竿先の曲がりが小さければ小さいほどリリースタイミングがシビア(あるいはピーキー、peaky)になる。曲がる範囲か狭く、元に戻るまでの時間が短いので、キャストに必要な力の「溜め」が作りにくく、リリースの許容範囲が狭くなる。上掲の動画で空クンが言及している通り、キャストは柔らかめ&レギュラーテーパーの竿の方が向いていると言える所以。

最も、ファーストテーパーの竿はダメで、レギュラーばかりが良いかと言えば、必ずしもそうは言えない。ファーストテーパーの竿は竿先が繊細に動くので魚のアタリが取りやすいし、トゥイッチなどルアーのアクションがつけやすいといったレギュラーには無いメリットもある。キャストは重要ではあるけれど、釣りをするための一要素でしかない。当然ながら、メーカーも用途に応じてわざわざ曲がりの異なる竿を販売している訳。しかし殊キャスティング(の練習)においては、比較的テクニックを要する種類の竿だとは言える。

あくまでファーストテーパーの竿を使って上手くキャストしようとする場合、コツは個人的にこんな所だと思う。いずれも突き詰めれば、いかに曲がりにくい竿を曲げるかの工夫という事になる。

  1. 重めのルアーorシンカーを使う
  2. キャスト動作を速くする
  3. タラシを少し長めに取る

1.は直感的にも分かりやすい。竿先に結ぶモノが重ければそれだけ竿も曲がりやすい。ワーシャ1651Fでキャスト練習をする場合、アタシの使っているコーモランのプラクティスシンカーであれば1/2oz=14gが一番しっくりくる。公式値では、この竿の適合ルアーウェイト上限(20g)のやや下くらい。

2.は遠心力の問題。いかなるフォームであれ、キャストの際に竿を曲げるのは遠心力である。キャスト方向とは逆に竿を振り、一旦ピタッと止める。この時ルアーorシンカーにかかった遠心力によって竿は曲がる。以下の公式の通り、遠心力は1.でも言及した動作対象の重量(m)、および動く速度(v)が大きいほど大きくなる。端的に言えば、より重いルアーorシンカーをより速く動かせば、より竿の曲がりは大きくなるという事。直感的にも正しいよね。

遠心力の公式。https://juken-mikata.net/how-to/physics/centrifugal_force.html

3.は、ファーストテーパーの曲がりにくさをリーダーでカバーするためのコツ。一般的に、シングルハンドでキャストする際はタラシ(竿先~ルアーまでの距離)をほぼゼロにするケースが多い。この方がルアーの軌道がブレず、キャストの正確性(アキュラシー)が上がるため。

しかしファーストテーパーの竿でタラシをゼロにすると、竿先の収束が速い故にしなりが不十分になり、十分なパワーを溜める事が難しくなる。結果として、上記の通りリリースポイントが非常にピーキーになる。若干タラシを長めに取ることによってこのピーキーさを軽減し、「溜め」を感じやすくなる。ただ、ペンデュラムキャストほど長いタラシを取ってしまうと、竿先の動きとルアーorシンカーの動きが同期しなくなるし、障害物との接触可能性も高まる。長めと言ってもせいぜい5~10cm前後というのが、アタシのタックルでは最適であるように思う。

(因みに、タラシを長くすると上記遠心力の公式では分母(r)が大きくなるので、竿先を曲げる力は低減するはず。でも実感としてタラシは少し出した方がキャストしやすい。物理に明るい方、この理由を教えてくれませんか?)

で、キャスト上手くなれば釣れるの?

釣りにおいて最も大事なのは、釣れるか否かと言うこと。これだけ苦労してキャスティングスキルを磨けば、爆釣アングラーになれるかと言うと…そうでもない(笑)。当然ながら魚の居ない所にいくら正確にキャストしても釣れるはず無いからね。

じゃあキャスティングスキルを磨く意味って何?と言うと、自分が確実にマネージできる要素が増える、という事に尽きる。自然を相手にする釣りにおいては、時間帯・気圧・水温・水流など、極めて多くの変動要素が関与してくる。この内、自然環境に起因する要素は個人では思う様に変える事はできない。精々釣りアプリや天気予報でおおよその釣り場のコンディションを予想するのが関の山。しかし、狙ったポイントに確実にルアーを落とせるというのは、釣り人が確実にコントロールできる要素なのだ。潮の流れや地形から判断してココなら魚が居るであろう場所にルアーを送り込む。仮にバイトが無ければ、それはキャスト以外の要素に誤りがあった訳。狙った場所を狙えたという要素は確実にクリアしているので、修正すべきは他の要素という事になる。言わばマネージ可能な要素を道具として、不確実な要素の中で答えを探して行く。その道具を磨く事の一つがキャストスキルの向上なのだと思う。

次第に分かり始めた、ベイトリールの扱い。早く自粛ムード解けて、自由に釣りができればいいな。アンタレス&ワーシャでシーバスランカー、アコウ40cmアップいきたいな!

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