ルアーカラー考。②

前回の記事で、ルアーの色が魚の捕食にどれほど影響するかを考えてみた。今回はもう少し別の観点から、ルアーカラーの重要性について考えてみたい。

水深とルアーカラー

ルアーの色についてアレコレ考えていると、「そもそも色って魚にはどんな感じに見えてるの?」という疑問が湧く。当然、魚は水の中に居る訳だから、同じ色でも空気中での見え方とは異なるはず。また、深度が深くなれば太陽光も届きにくくなる分、見えにくくなるはず。

英文だが、水中におけるルアーカラーの重要性について、以下の記事に興味深い考察がある。

View From BelowDoes Lure Color Matter Underwater? https://www.fix.com/blog/view-from-below-lures-underwater/

この記事の中では、水深と色の関係について以下の図でまとめている。

Light Absorption And Lure Colors
Source: Fix.com Blog

上図に依ると、赤・橙はごく浅いレンジ(20-30ft, 約6-9m)、黃・緑は60-70ft(約18-21m)で判別ができなくなる。70ftを超えると濃い青くらいしか認識できない。恐らく、ダイビングなどをやる人は経験的に同意できるのではないだろうか。

記事では続けて水平方向の距離と色の見え方についても言及している。ルアーと魚の間の距離が40ft(約12m)も離れれば、赤色は濃いグレーや黒と区別がつかないとしている。

What About Width?
Source: Fix.com Blog

深度による色の変化を実証した動画も、YouTubeで幾つか見つかる。以下の実験においても、赤・橙・黃辺りの色は少し水深のある所ではかなり褪色してしまう事が分かる。

言うまでもなく、コレは光の波長の問題。赤色に近い光ほど波長は短く、紫に近い光ほど波長は長い。光源と光を反射する物体との距離が短ければ赤い光が反射して赤く見え、遠いほど紫の光が反射して紫に見える

上記の内容を踏まえてルアー色の使い分けについて考えると、水深6-7mを超える深い釣場では赤・黃といった短波の光にしか反応しない色にこだわっても無意味、という事になる。ルアーの種類との関係で言うと、赤・黃などの色にこだわるなら比較的浅めのレンジを泳ぐミノーやシンペンを使う場合、という事になるだろう。

天候・濁りの影響は?

物体の色が光の反射である以上、天候による日照の変化や濁りによる水の透過度などもルアーカラーの見え方に影響して来るだろう。

先ず天候に関しては、曇りや雨の日は光量が少なくなる訳だから、色は目立たなくなる。特に短波の光は水蒸気や雲に反射され、赤色などは特に目立たなくなるなるはず。光量の少ない状況では、晴れの日とは異なるカラー選択をした方が良さそうだ。具体的には、濃い青や紫など、波長の長い光に反応する色の方が有効という事になる。

濁りもまた、水中の微粒子が可視光を遮って明るめの色は目立たなくなる。以下の実験では、赤・白などの色が濃い色の水では目立たなくなるなるのに対し、黒っぽい色はコントラストが際立って見えている。

これとは逆のケースも考えられる。爆釣チャンネルのオンラインサロンの中で「石垣島で使うルアーの色は?」という質問に対し、村田基さんが「赤・ピンクなんかのド派手な色がいいよ」と答えるエピソードがあった。恐らく、沖縄や周辺の島嶼部のように極めて透明度の高い水質、かつ日射量が多い環境では短波の光に反応する色が目立つという事ではないだろうか。恐らく、天候・水質によってカラー選択法は変えた方が良い。

色だけで釣れるのか?

さてここでもう一つの疑問。環境・天候に応じて魚が認識しやすい色をしたルアーを選んだとして、それだけで魚が釣れるのだろうか?

上掲のブログに依ると、ルアーが40ftも離れれば最早色の判別は難しくなる。これに曇りや濁りなどの要素が絡んでくると、色の効果は半減するだろう。また、魚が目を使ってベイトを探す場合、色以前に先ずは視界に入って来る事の方が重要だろう。

そう考えるとカラー選択より、魚のいる所にルアーを正確にキャストする事、ルアーのサイズを調整する事、ルアーのアクションを工夫する事、魚のいるレンジを泳がせる事などの方が大事なのではないかと思えてくる。「見えない」は「存在しない」と同義である。

色に釣られるのは釣り人自身?

選んだ理由が何であれ、釣れる色だと確信したルアーは出番が多くなる。キャスト回数も増えれば、ルアー選択時の迷いも減る。釣れれば喜びもひとしおだし、釣れなくても諦めがつく(「あの色で釣れないなら魚が居なかったに違いない」)。

逆に訝しく思う色のルアーでは、自信を持って釣りができない。特に釣れなかった時、「やっぱりあの色使っときゃ良かった…」としこりが残る。

ルアーフィッシングは突き詰めれば「投げてナンボ」の世界。魚が居る場所で、魚の居る時に、魚の目の前にルアーを落とす必要がある。不確実で反復する作業のモチベを維持するには、道具に対する信頼が欠かせない。ルアーの色も「釣れそう」と釣り人自身が思う事が大事だ。魚に対する効果も然ることながら、釣り人自身のマインドへの効果が釣果に繋がる、というのは確実にある。

結局、色ってどうよ?

前回の記事では、ルアーの色は魚の捕食行動に一定の効果があると述べた。下記の本で述べられている通り、色の違いによる食いつきの良し悪しとか、魚種による色の好みというのは確実にありそうだ。

但し、今回考察した通り、ルアーカラーは天候・水質によってかなり効果が減退しうる。また、ポイント選び・キャスティング・ルアーアクションといった他の要素と比較しても優位に立つとは考えにくい。恐らく、釣果に繋がる要素の中では比較的重要度が小さい。それなら選択基準が何であれ、釣り人自身が信頼をおける色を選ぶというのも良い選択かも知れない。

少し長くなったので、今回はコレまで。これまでの考察を踏まえて、次回はオレなりのルアーカラー選択基準を述べてみたい。

“ルアーカラー考。②” への1件の返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です